コールドチェーンとは?低温輸送の必要性と課題を紹介

白黒のトラックの模型

近年、冷凍食品やワクチンの需要が高まるなか、コールドチェーンの重要性が増しています。温度管理が品質や安全性に直結する医薬品の輸送においては、コールドチェーンの適切な運用が求められます。

しかし、適切な温度を維持するには、輸送中の温度管理や設備投資など多くの課題もあります。

この記事では、コールドチェーンの仕組みや必要性、直面する課題について詳しく解説します。

コールドチェーン(低温物流)とは

鎖のイラスト

コールドチェーンとは、医薬品や検体、生鮮食品など、温度管理が必要な製品の品質を維持するために、生産から消費までの過程で低温状態を保つ物流システムのことです。

冷蔵・冷凍輸送を含むこの仕組みは、医薬品業界や食品業界など幅広い分野で活用されています。

例えば、医薬品の分野では、ワクチンや血液製剤などの輸送にコールドチェーンが不可欠です。

ワクチンの有効性は温度管理に大きく依存しており、適切な温度で輸送・保管されなければ、その品質や効果が損なわれる可能性があります。

「コールドチェーン」という名称は、低温(cold)の状態を鎖(chain)のように途切れなく維持するという概念に由来しています。

すべての過程で適切な温度管理が行われることで、品質や安全性が保証されるのです。

コールドチェーン(低温物流)の必要性

研究者がフラスコを持っている様子

コールドチェーンは、特に医薬品や食品の品質維持のために不可欠なシステムです。温度が適切に管理されないと、製品が劣化し、最悪の場合、健康被害につながる可能性もあります。

医薬品におけるコールドチェーンの重要性

コールドチェーンは、医薬品の物流において、製品の品質と有効性を維持するための役割を果たしています。特に、血液製剤やワクチンのように温度の変動が品質に直結するものは、徹底した管理が必要です。

例えば、輸血用の赤血球製剤は2~6℃、血小板製剤は20~24℃の範囲で保存する必要があり、適切な温度が維持されなければ品質が劣化し、使用できなくなります。

インフルエンザワクチンは2~8℃での保存が推奨されており、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの場合、-20℃以下、さらには一部で-70℃以下という超低温での保管が求められます。適切な温度が保たれていなければ、ワクチンの効果が失われる可能性があり、安全な接種ができなくなってしまいます。

実際に、2020年の新型コロナウイルスの流行時には、適切な温度で管理されなかったワクチンが大量廃棄される事態が発生しました。

このような事例からもわかるように、医薬品の品質を守るためには、生産から配送、保管に至るまで一貫した温度管理が必要です。

世界的な医療ニーズの高まりとともに、より精密で信頼性の高いコールドチェーン技術の導入が求められています。

食品業界におけるコールドチェーンの役割

冷凍食品や乳製品、生鮮食品などは適切な温度管理が行われていないと、品質が劣化し、最悪の場合、食中毒の原因となることもあります。

冷凍食品は-18℃以下で保存することで、長期間にわたって品質を維持することが可能です。

一方で、乳製品や生鮮食品は0~5℃の冷蔵管理が必要であり、温度の変動によって風味や鮮度が損なわれるため、慎重な管理が求められます。

さらに、日本の食文化が多様化し、海外からの食品輸入が増加する中で、国際的なコールドチェーンの整備も進んでいます。

世界各国の生鮮食品を安全に流通させるためには、輸送時の温度管理を徹底し、消費者に届くまでの品質を保つことが重要です。

コールドチェーン(低温物流)のメリット

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コールドチェーンを適切に活用することで、医薬品の品質と安全性を維持しながら、遠方の患者にも安定した供給が可能になります。

都市部と地方の医療格差を解消し、どの地域でも同じ水準の医療サービスを受けられる環境を整えられることは、大きなメリットです。

また、医薬品を扱う企業にとっても、コールドチェーンの導入は市場拡大のチャンスとなります。

コールドチェーンにより、これまで流通が難しかった地域にも製品を届けられるようになります。適切な温度管理を徹底することで、品質の劣化や廃棄ロスを防ぎ、コスト削減にもつながるでしょう。

コールドチェーンの恩恵を受けるのは医薬品業界だけではありません。

食品業界では、生鮮食品や乳製品、冷凍食品の鮮度保持が可能になり、品質の良い商品を消費者に提供できます。

例えば、冷凍マグロの輸出においては、-60℃以下の超低温で保存・輸送することで、獲れたての鮮度を維持したまま世界中の市場に届けることができます。

また、化学製品や電子機器の分野でも、温度管理が品質維持に直結するため、コールドチェーンの導入が進んでいます。

このように、コールドチェーンは幅広い業界で活用され、製品の品質向上、市場競争力の強化、廃棄ロスの削減といった多くのメリットをもたらしています。

コールドチェーン(低温物流)のデメリットや課題

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コールドチェーンは多くの利点を持つ一方で、いくつかの課題も抱えています。

導入や運用にコストがかかることや、温度管理の難しさ、冷蔵・冷凍倉庫の不足、輸送の責任の重さなどが代表的な課題です。

コストがかかる

コールドチェーンの構築には、冷蔵・冷凍設備の導入や、温度管理が可能な専用車両の確保が必要です。

これらの設備には多額の初期投資がかかるうえに、運用には高い電力消費が伴い、ランニングコストも増大します。

特に、冷凍倉庫の維持費や、温度管理システムのアップグレードには継続的な投資が求められるため、企業にとっては負担となる場合もあるでしょう。

電気代の高騰やエネルギーコストの上昇により、コールドチェーンの運用コストは今後さらに増加する可能性があります。

導入の際には、得られる利益とコストを慎重に比較し、長期的な視点で判断することが求められるでしょう。

温度管理が大変

コールドチェーンでは、輸送・保管中の温度を厳格に管理することが求められます。製品ごとに適切な温度範囲が異なり、それぞれに最適な環境を整えなければなりません。

例えば、ワクチンや血液製剤は数度の温度変化でも品質が劣化するため、細心の注意が必要です。

さらに、輸送中の温度変化への対応や、急なトラブルが発生した際のリカバリー能力も重要です。

輸送中に冷却装置が故障した場合、迅速に代替手段を講じなければ、損傷や劣化のリスクがあります。

そのため、配送担当者や倉庫管理者には、高度な技術と専門知識が求められます。

現場の従業員への研修も不可欠であり、企業側は定期的なトレーニングを実施し、管理体制を強化する必要があります。

倉庫不足が深刻

コールドチェーンでは、輸送だけでなく、冷蔵・冷凍倉庫の確保が必要です。

しかし、近年の需要増加により、全国的に冷蔵・冷凍倉庫の不足が深刻化しています。

特に都市部では新たな倉庫の建設が難しく、既存の倉庫の庫腹占有率は常時100%に近い状態です。

今後は、倉庫スペースの確保とともに、AIを活用した在庫管理や、配送の最適化など、効率化を進める工夫も必要になるでしょう。

責任が重大

医薬品の輸送において、コールドチェーンの温度管理が不十分だと、製品の劣化や廃棄だけでなく、患者の健康にも影響を与える可能性があります。

特に、ワクチンや血液製剤のように厳密な管理が求められる製品では、温度管理のミスが致命的な問題につながりかねません。

輸送中の温度管理を徹底し、問題が発生した際の追跡や対策を迅速に講じる体制を整えることが重要です。

コールドチェーン(低温物流)にドライシッパーを活用

飛行機とビル

コールドチェーンは、医薬品の品質を維持しながら輸送するために不可欠なシステムですが、構築には高コストや管理の難しさといった課題があります。

コールドチェーンによる極低温輸送には、クライオセンドのドライシッパー関連サービスをぜひご活用ください。

ドライシッパーとは、液体窒素を吸収材に充填し、内部を-150℃以下の極低温に保つことができる輸送専用容器です。医薬品はもちろん、凍結胚や幹細胞、DNAサンプルなどの生体試料についても安全かつ確実に輸送することが可能です。

クライオセンドには、これまで2,500件以上の輸送実績があり、事故が発生したことは一度もございません。

ドライシッパーを活用したコールドチェーンについては、ぜひクライオセンドにお気軽にご相談ください。

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