DNAは生命科学研究や医療分野で非常に重要な役割を担っており、ゲノム解析や遺伝子工学、診断技術など、多様な目的で利用されています。
研究機関や企業間でDNAサンプルをやり取りする機会も多いのではないでしょうか。
しかし、DNAは物理的・化学的なダメージを受けやすく、輸送時の温度や衝撃管理を誤ると解析結果に影響が出てしまうため、慎重な手配が必要です。
この記事では、DNAサンプルの輸送方法について、保存温度や手順、ドライアイスや液体窒素を用いた極低温輸送の注意点を紹介します。
DNAサンプルの輸送温度は常温?低温?
DNAサンプルの輸送温度は、基本的には-20℃以下の低温環境で行うことが推奨されています。
DNAは熱や紫外線などにより変性・分解を起こしやすいため、特にゲノムDNAやRNA、cDNAなどは、サンプルの品質を維持するために、冷凍保管・輸送が求められます。
以下の表は、DNAサンプルの種類と適切な輸送温度の目安です。
DNAサンプルの種類 | 輸送温度 |
ゲノムDNAサンプル | 冷凍(-20℃~-80℃) |
RNAサンプル | 冷凍(-20℃~-80℃) |
cDNAサンプル | 冷凍(-20℃~-80℃) |
細胞ペレット | 冷蔵または冷凍(-20℃~-80℃) |
組織(FFPE) | 冷蔵または冷凍(-20℃~-80℃) |
サンプルの純度や濃度、保存期間によって最適温度が変わる場合もあるため、実験プロトコルや各研究室のマニュアルを参考にしましょう。
プラスミドDNAや比較的小さい分子量のDNA断片などは、比較的分解リスクが低いこともあり、短期間(1日~2日程度)の輸送・保存であれば4℃程度の冷蔵条件でも問題ないケースがあります。
また、国際便などを利用した長距離輸送の場合は、気温差や輸送日数が長くなることが考えられるため、-80℃~-180℃程度の極低温を維持することが望ましいでしょう。
輸送中もDNAサンプルの品質を維持するには、研究内容や輸送日数、採取したDNAの特性を考慮して、徹底した温度管理を行うことが重要です。
出荷元と受け取り先の間で「輸送温度」「輸送中の状態管理」について明確な合意をしておくと、トラブルを防ぐことにつながります。
DNAサンプルの輸送手順
DNAサンプルを輸送する際は、温度以外にも振動・衝撃対策や漏れ防止など、さまざまな注意点があります。
ここでは冷蔵または冷凍(-20℃~-80℃)条件で輸送を行う場合の、基本的な流れを紹介します。
準備するもの
- 発泡スチロール
- ドライアイスまたは保冷剤
- 緩衝材
- 新聞紙
まずは必要な材料をそろえます。
発泡スチロールは外気温からの影響を遮断しやすく、温度を安定させるうえで必須アイテムです。
輸送日数やサンプルに適した温度に合わせて、ドライアイスまたは保冷剤を適切に準備しましょう。輸送日数が1日程度であれば2kg以上、2日であれば3kg以上のドライアイスが必要とされています。輸送時間や外気温などの条件によっても変わるため、少し余裕を持たせて準備するのが望ましいです。
新聞紙はドライアイスを包むことで気化を緩やかにし、長持ちさせる効果があるため、複数枚用意しておくと便利です。
梱包の仕方
- ドライアイスまたは保冷剤を新聞紙で包む
- 発泡スチロールに①を入れる
- チューブ等に入ったDNAサンプルを緩衝材で包む
- ②に③を入れ、隙間を緩衝材で埋める
梱包時には、サンプルとドライアイス(または保冷剤)が直接触れないように注意しましょう。
ドライアイスは取り扱いに注意が必要ですが、保冷剤よりも温度を低く保ちやすいため、RNAやゲノムDNAなど熱に敏感なサンプルには適しています。
緩衝材で隙間を埋めることで固定して、輸送中の振動や衝撃を防ぎましょう。
輸送業者に依頼
DNAサンプルを輸送する際は、冷蔵便または冷凍便の取扱いがある物流業者に依頼しましょう。
ただし、荷物の積み込み・積み下ろし時の衝撃、気温差による損傷など、輸送中にもさまざまなリスクが存在し、サンプルの品質劣化につながるおそれもあります。
そのため、輸送するDNAサンプルの重要度を考慮して、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
DNAサンプルを極低温(-80℃~-180℃)で輸送する方法
温度管理がより厳格に求められる、あるいは長期間の輸送が必要な場合は、ドライアイスよりもさらに低い温度で輸送する必要があります。
液体窒素を用いた極低温輸送が用いられるのが一般的です。
液体窒素を使用
極低温輸送では、液体窒素を使った凍結保存容器「ドライシッパー」を活用します。
ドライシッパーに液体窒素を充填することで、-196℃ほどの極低温状態を長時間保つことができ、航空便などの長距離輸送でも極低温を維持できるのが特徴です。
液体窒素は輸送時には危険物扱いとみなされる場合があり、規制の条件を守って輸送しなければなりません。特に航空機での輸送には、IATA(国際航空運送協会)の規定に従った表示や申告が必要になるため、注意が必要です。
ドライシッパーは、国際航空運送協会(IATA)の規定に準じて適切に梱包されていれば、航空機内への持ち込みや国際輸送が可能です。
専門業者に依頼
ドライシッパーはレンタルも可能ですが、液体窒素は取り扱いミスが事故につながるリスクもあるため、一般の方が取り扱うのは避けたほうが良いでしょう。
安全かつ確実にDNAサンプルを届けるためにも、極低温輸送に特化した専門業者へ依頼することをおすすめします。
CryoSend(クライオセンド)はドライシッパー輸送の専門業者として、-196℃の液体窒素を充填した輸送専用容器によるサービスを提供しています。
温度記録や輸送状況のモニタリングにより輸送中のトラブルリスクを抑え、1週間~2週間の長期輸送でもDNAの品質を保持することが可能です。
DNAサンプルの輸送はCryoSendにご相談ください
DNAサンプルの輸送は、そのまま研究成果や医療現場での診断・治療成果にも直結するため、厳密な温度管理と丁寧な梱包が重要です。
ドライアイスや保冷剤を使った輸送は比較的容易に行えますが、少しでも温度が上昇するとサンプルの信頼性が低下するおそれがあります。
長距離・長期間の輸送では液体窒素を用いたドライシッパーを活用するのがおすすめです。
CryoSend(クライオセンド)では、-196℃の液体窒素を使用した輸送から管理までを包括的にサポートし、大切なDNAサンプルを安全に届ける仕組みを整えています。
高い専門性を持つスタッフが輸送プロセス全般を管理するため、研究者・医療従事者はサンプルの品質維持を心配することなく、本来の研究や医療活動に専念できます。
DNAサンプルの輸送をご検討中の方は、ぜひCryoSendにご相談ください。