凍結胚や卵子、精子など、生体試料の輸送に必要不可欠なのが、液体窒素容器です。
液体窒素輸送容器にはいくつかの種類があり、それぞれ性能が異なります。
この記事では、液体窒素輸送容器とは何か、種類による違いや活用事例を紹介します。
液体窒素輸送容器とは
液体窒素輸送容器とは、凍結受精卵や凍結卵子などの生体試料の凍結保存に適した容器です。
容器内の充塡剤に液体窒素を吸収させて、極低温状態に保ちます。
国際航空運送協会のIATA危険物規則書に準じた構造の液体窒素輸送容器を使用すれば、生体試料を海外へ航空輸送することも可能です。
液体窒素輸送容器の種類
液体窒素輸送容器にはいくつかの種類があります。
続いては、液体窒素輸送容器の種類による違いや特徴について紹介します。
凍結保存容器(小型・中型)
液体窒素の容量が175L以下の容器を、小型・中型凍結保存容器と言います。
小型と中型の違いは、試料の保存可能な本数や口径の大小によるものです。
小型・中型タイプの凍結保存容器は、液相保存が主流です。
液相保存とは、タンク内の液体窒素の中に直接保存したいものを入れる方法で、-196℃で生体試料を保存できるというメリットがあります。
ただし、液体窒素の内部に細菌やカビ、ウイルスなどが侵入すると、保存している生体試料が汚染されるリスクがあるため、注意も必要です。
凍結保存容器(大型)
液体窒素の容量が175Lを超える容器を、大型凍結保存容器と言います。
小型・中型タイプと同じ液相保存タイプのものと、気相保存タイプのものがあります。
気相保存とは、容器の下のトレイに浸からない程度まで液体窒素を充填させ、そのトレイより上の部分で試料を保存する方法のことです。
容器内の温度は-196℃になるため、液相保存より温度が高めですが、生体試料に異物が混入するリスクが低いというメリットがあります。
凍結試料搬送容器(ドライシッパー)
凍結試料搬送容器(ドライシッパー)とは、容器内にある充塡剤に液体窒素を吸着させ、気相環境下で搬送を行うための容器です。
長いものでは、最長20日近くに渡って-150℃以下の極低温状態を維持することができます。
ただし、生体試料の品質を保つために、基本的にはカタログ記載の日数から1日〜2日引いた日数での使用が推奨されています。
気相環境下の保存となるので、生体試料にカビや細菌が入り込むリスクも低いです。
可搬式液体窒素供給容器
可搬式液体窒素供給容器とは、約42L〜200Lの液体窒素を運搬することができるキャスター付き容器です。
液取り専用の容器なので、液体窒素を低圧で取り出すことができます。
容器の密閉性が高く、内圧が上昇することで、安全弁から大気中に窒素ガスが放出される仕組みになっています。
そのため、フレキシブルホースや配管を使って大型凍結保存容器と接続することで、液体窒素の自動供給が可能になります。
デュワー瓶
デュワー瓶は、少量の液体窒素を貯蔵できる開放型の容器です。
理化学実験や簡易的な液体窒素の運搬に用いられています。
凍結保存容器と同じ真空二重構造なので、液体窒素が気化しにくいという特徴があります。
液体窒素輸送容器ドライシッパーの活用事例
液体窒素輸送容器のなかでも、生体試料の輸送に適しているのが、ドライシッパーです。
例えば、以下のようなものの輸送に用いられています。
- ヒト由来の凍結受精卵
- 動物由来の凍結受精卵
- 凍結精子
- 凍結卵子
- 凍結血液細胞
- 幹細胞
- 骨髄細胞
- 尿検体
- DNAサンプル
- 抗体
- iPS細胞
- CAR-T細胞
- その他医療関連物質
例えば、不妊治療中のご夫婦が引っ越しや転勤などによる転院が必要となった場合、凍結した受精卵や凍結精子、凍結卵子などを新しいクリニックに輸送する必要が出てきます。
また、再生医療分野でもドライシッパーによる細胞の輸送が広く活用されています。
なかには、海外の医療・研究機関への輸送が必要になるケースもあるため、最長20日という長期間に渡って極低温状態をキープできるドライシッパーが必要になるのです。
ただし、輸送に用いられるドライシッパーの取り扱いは非常に難しく、生体試料を安全に輸送するためには、輸送中も絶えず徹底した温度管理が必要となります。
そのため、生体試料の輸送は専門の業者に依頼するのが一般的です。
CryoSend(クライオセンド)では、徹底した温度管理のもと、生体試料を始めとした検体の輸送サービスを提供しています。
ドライシッパーや液体窒素などの手配はもちろん、輸送に必要な緩衝材や温度ロガーなどの専用輸送容器も準備しますので、お客様の手間は取らせません。
検体輸送サービスの活用事例も多岐に渡ります。
ラボや研究室の移転のための生体試料の移転
不妊治療クリニック間での凍結受精卵の輸送
動物の生体試料の輸送
生体試料を始めとする検体の輸送にお悩みの方は、
国内外で2,500以上の検体・ドライシッパー輸送実績を誇るCryoSendにぜひご相談ください。
液体窒素輸送容器はレンタルも可能
ドライシッパーは大きく、重たい容器なので、頻繁に必要な状況でなければレンタルを選ぶケースが多いです。
レンタルサービスは、専門業者や不妊治療を行うクリニックなどで行われており、検体輸送サービスを提供するCryoSendでもドライシッパーのレンタルサービスを行っています。
当社のドライシッパーレンタルサービスに含まれるものは、以下の5つです。
ドライシッパー本体
ハードジェルの容器ケース(必要に応じて)
液化窒素充填(依頼に応じて)
使用方法のサポート
お客様、または移送元までの配送費用
ドライシッパーの性能は、メーカーによって異なります。
また、生体試料の数や用途に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
CryoSendのドライシッパーレンタルサービスでは、お客様のご要望に沿った容器を提案いたしますので、お気軽にご相談ください。